事業用の太陽光発電装置からの電力買取を終了することについて、経済産業省が議論を始めました。
投資用太陽光発電というのは、2012年以降「固定価格買取制度」通称FIT法によって、発電した電気を決められた価格で20年間買取することが保証されているというものです。この仕組みによって太陽光発電への投資を促して、普及を図ってきたのです。
その固定買取保証をやめて、自由価格での取引とするという議論が始まったのです。
巷ではこれで太陽光発電投資も終了だという声も聞こえます。
太陽光発電は終わってしまうのか?まだ投資しても大丈夫なのか?
気になるところですが、そもそも太陽光発電投資は儲かるのでしょうか?実際のところどうなっていくのでしょうか?解説していきましょう。
太陽光発電装置による売電実績と予想
そもそも太陽光発電投資は利益を生み出すのか、実例として私の売電実績を公開しましょう。
これは簡易計算で経済産業省に報告している様式を一部変更して掲載しています。正確に全ての項目を列挙していませんが、参考になるデータだと思います。
ご覧のように、3年平均で純利益は年額175千円という成績でした。
この太陽光発電事業への投資額は総額で1900万円(専用ローン、金利2.6%、期間15年)。自己資金は100万円といったところです。
1年目と2年目は利益が少なめでした。というのも、その間は防草シートやフェンスへの投資、割高なメインテナンス契約という条件が重なったというマイナスの要因があります。
しかし3年目はメインテナンス会社を変更することで販管費も低減し、必要な投資も終了して、純利益は倍増、年間手取りで33万円という結果となりました。
太陽光発電はパネルが劣化していくことで、発電効率が低下していきます。結果として収益は年々低下することが予測されます。
しかしそれでも今後は年間30万円から20万円代後半の利益が12年間続き(ローンの終了まで)ます。
1900万円も投資して年間30万円の利益しかないのか?
と思いますか?
ですが、これは大半を太陽光ローンでまかなっています。ローンの元利を引いて、更に所得税を引いた後の数字なんです。
15年経った後はローンの支払いが無くなるので年間150万円程度の利益になるでしょう。それが固定買取期間が終了する20年まで、つまり残り5年間続きます。
この先の所得税率は所得に応じて変わってきますが、ざっくりとした計算でも、1100万円程度の利益になるのではないでしょうか。
しかし実際には、ここからパワコンの交換や、装置撤去費用を差し引くことになりますので、20年間での純利益は900万円程度ということになりそうです。
もちろん、これは100%保証されたものではありません。
経産省への報告や定期的なメインテナンス、災害対策などが必要ですが、年間30万円程度の利益が出るのなら、見合った利益だと思います。
利益が出ないような投資は誰も行わないでしょう。
私は太陽光発電所を5箇所所有しています。
購入した業者は3社で、それぞれ利益率は違います。
その経験から、「業者の選定は重要である」と実感してます。
営業マンは、都合の良いことしか言いません。
私は下記のサイトを参考に入念にシミューレーションを行い、売電開始後もメインテナンス会社の変更や草刈り対策業者の変更などを実施して今に至っています。
これから定期的に売電実績を公開していきます。お楽しみに。
買取価格終了の議論は進むものの、実際には投資熱を冷ますことはないでしょう
上記の例は固定買取価格制度への売電実績と予測です。
買取価格が固定されていますので、将来のキャッシュフローも計算しやすい。3年も実績を積めばトラブル対応なども理解できますので、将来予測にそれほど大きな差は出ないと思います。
しかし今議論が進んでいる固定価格買取制度終了となると事は異なってきます。
固定価格買取制度がなくなると、市場の卸価格での売電となると言われています。その価格は概ね7円〜10円/kWhです。2019年の買取価格が14円/kWhなので、半減です。
しかしもし政府が原子力発電をさらに増強するようなことがあると、この価格はさらに低下する可能性もあります。
出典:経済産業省
経済産業省の計画では2030年に太陽光発電の割合を全エネルギー供給量の7%にする事となっています。
一方の原子力発電は20から22%です。
国民から反対の声も多い中、政府は未だに原子力発電での電力供給を増強する予定なのです。
経済産業省は、 太陽光発電の売電価格にコストを上乗せしているため、固定買取価格制度を続けると一般家庭への負担が増えていく事になると懸念を述べています。
一見筋が通ったロジックのように聞こえます。
しかしながら、だからと言って原子力発電を増強することが許されるのでしょうか?
原子力発電は建設費用も莫大であり、さらに莫大な廃棄費用が必要であり、加えて、廃棄の方法さえ確立されていません。
そのような発電方式を増強するための費用はどうするのでしょうか?その費用も当然国民が負担(見えない形で税負担)することになるはずです。何よりも、環境破壊と近隣住民の健康と安心はどうするのでしょう。
固定価格買取制度を単純に終了すれば、太陽光発電は消滅する。
投資に見合うリターンがなければ誰も投資しません。
2019年の固定価格買い取り価格は14円/kWhです。以前に比べるとずいぶん安くなりました。
ですがこれでも実は投資採算は合うのです。
なぜなら、太陽光発電装置やパワコンが値下がりして初期費用が相応に低くなっているからです。
太陽光発電装置を手がける業者にこの投資の仕組みを聞いたところ、「買取価格の大小は採算性に関係あるものの、問題は買取価格の大小だけではない」とのこと。
太陽光発電が普及するという見込みがあり、企業が時間とお金をかけて装置を改良すれば、利益を生み出す程度に装置の価格を下げることが可能なのです。
装置の価格が下がれば、買取価格が40円を超えていた時と、20円を切った現在であっても投資者の利回りに大きな差はないのだと。
しかし1kW当たり7~10円の売電価格では、現在の設備費用が半分にならなくては採算が取れません。
いくらメーカーが研究開発を強化しても、いきなり設備機器の価格を半値にするのはほぼ不可能でしょう。更に野点(有休の田んぼなどを買ったり、借りたりして地面の上に太陽光発電装置を設置する方法)の場合、土地代がかかります。装置会社が価格を下げても土地代は下がりません。
つまり、固定価格買い取りを終了すれば、その時点で産業用太陽光発電の普及は止まり、固定期間が終了した事業者から順次撤退していくことになります。
その結果、太陽光発電は徐々に市場から消えていく以外無くなります。
そのようなことが想像できるでしょうか?先進国の中で日本だけ、太陽光発電が減少していく。
答えはNoでしょう。
固定価格買い取り終了とともに新たな施策が導入される。
政府の議論が、「産業用大規模太陽光発電はもう普及しなくて良い」との結論に至れば、固定価格買取制度は終了させ、ドイツのように市場卸価格が急激に下がった場合にのみ補助する程度の施策になるでしょう。
しかしこれでは投資に旨味がないので、誰も事業投資をしなくなる可能性が高いと考えられます。
超大規模で、原野をタダ同然で手に入れて装置を設置して、それで、かろうじて利益が出せるかどうかという案件になってしまいます。
その一方で、政府は一般家庭の屋根への太陽光発電装置設置普及を再度促す可能性があります。
現在自治体から一般家庭への太陽光発電装置設置に対する補助金は打ち切られています。
ですが何らかの施策を講じて一般家庭に太陽光発電装置を普及させ、余剰電力を買い取ることで太陽光発電装置の普及を図るという施策は考えられるのはないでしょうか?
一般家庭の場合、利益を得るというよりも、電力会社から電力を購入するよりは特になる程度でも興味を示す可能性があり、更に災害対策という意義もあります。
太陽光発電と蓄電池をセットにして設置させれば、災害時の備えになるとアピールできます。
もちろん、何らかの補助を出さないと無理な話ではありますが。
事業用太陽光発電事業に投資するのなら、今がチャンス!?
ここまで見てきましたように、大規模事業用太陽光発電事業の将来は不透明になってきました。
見通しとしては何らかの施策を入れてさらに投資が続くように促すものと思われます。
そうしなければ事業者が立ち行かなくなり、その結果現在の太陽光発電装置のメンテナンスもままならなくなる可能性が出てくるからです。
さらに長期的な視点で考えてみると、単純な固定価格買取制度終了は、太陽光発電装置の消滅につながりかねないと考えられるからです。
最も重要なことは、太陽光発電投資に興味があるのでしたら、制度が変わるまでに投資を終了させるということです。
経済産業省が目指しているのは20年度の法改正です。 ですのでまだまだ時間的に余裕はあります。
法が改正されるのであれば、その内容を熟慮してからどこに投資するかを決めればよいでしょう。
再生エネルギーや自然に優しい発電は、太陽光発電だけではなく、風力発電やバイオマス発電なども存在します。
投資をしつつ環境保全に役立てる、投資家冥利に尽きるのではないでしょうか。