太陽光発電の廃棄費用の扱いが経済産業省内での議論の的になっています。
その理由は、調査の結果、事業者の多くが廃棄費用を積み立てていない事が判明したからです。
適切に廃棄されなければ、環境に優しいはずの太陽光発電も意味がなくなりかねません。
この記事では、一般家庭の太陽光発電装置の廃棄処分費用とともに、主に50Kw以下の、いわゆる低圧と言われる太陽光発電について解説していきます。
太陽光発電は国との契約で、最初に契約した固定価格で20年の間、発電した電力を買い取ってもらえます。しかし20年経った後の売電価格は提示されていないのが現状です。
その時点で取れる選択肢は二つです。20年経った時点で売電をやめるのであればシステムを廃棄するという選択。もう一つは、それまでより低い買い取り価格で売電を続けるという選択が考えられます。
しかし売電終了して廃棄するにしても、売電を続けるにしても、どれぐらいの費用がかかるのか、いくらで買い取ってもらえるのかが分からなければ検討のしようがありません。
まだまだ先とはいえ必ずやってくる固定買取期間終了。
本記事では、その時のために現在どのようなことが議論されており、どのようなことが予測されるのか、太陽光発電装置の廃棄費用はどれくらいかかるのか、を解説していきます。
太陽光発電の将来
まず最初に、太陽光発電は20年間の固定買取契約なので、今世間で騒がれている様な売電価格の低下は既存の設置者には関係ありません。固定買取期間中に買取価格が引き下げら得ることはありませんので、安心してください。
太陽光発電の将来の見通しとしては、資源エネルギー庁の発表資料が参考になります。2019年4月11日に発表された資源エネルギー庁の資料では、2017年度に16%であった再生エネルギーを2030年には22〜24%に増加させると記されています。また、原子力発電は3%から20〜22%へ増強する予定となっています。
現況、環境問題は大いなる議論を呼んでいますので、原子力発電の供給量が実際にどれくらい増えるのかは政策次第です。一方、環境に優しい太陽光発電をはじめとする自然エネルギーへの依存度が今以上に増していく事は疑いの余地がなさそうです。
出典:資源エネルギー庁
再生エネルギーへの依存度増大、その観点から考えると固定買取保証が終了する20年後に一切買取をしない、という事態は想定し難いと考えられます。
なぜなら、買取を取りやめれば一気に多くの設備からの電力供給が途絶え、電力確保ができなくなるからです。
したがって、買取保証制度が終了した後も、最低限の投資(修理やコンバーターの買い替え)で売電を続けるというオプションが考えられます。
固定期間終了後の売電
20年の固定買取期間が終わった後の買い取り価格がどうなるのか?は未だはっきりしていません。
そもそも太陽光モジュールパネルがどれほどの期間稼働し続けるのかも分かっていません。理論的には発電能力は年々減少するものの、20〜30年は発電を続けると言われています。これはメーカー保証が20年である製品が多いことからも、うなづける数字だと思います。
つまり、20年の固定買取期間を満了しても、パネルとパワコン(パネルで集めたエネルギーを交流電流に変える装置)が故障していなければ、あと数年は売電が可能ということになります。
では、その時点での売電価格はどうなるかが気になるところです。政府として、現時点では1Kw当たり24円〜40円で買取りしていますが、最終的には7円程度に下げるという構想を持っています。
つまり、固定買取期間が終了しても、少なくとも1 Kw あたり7円では売電できると考えられそうです。
これは現在の売電価格に対して平均25%(17.5%〜29.1%)の価格になります。
とても低い価格になるように思えます。しかし太陽光発電装置の減価償却は15年ですので、20年後には償却も終わり、償却資産税はかからなくなっています。
また、融資を受けて稼働させていた案件であっても、融資の返済も終了しているはずです。
つまりその時点での売電収入のほとんどが利益として計上できるはずですので、50Kw程度の低圧案件であっても、税引後40万円程度の収入になるものと計算できます。
まだ発電している太陽光発電装置を廃棄しまうのはもったいない話です。
20年の固定買取期間が終了しても、売電を続けるというのは一つの選択肢としてあり得るのではないでしょうか。
では次に、廃棄には一体どれほどの費用がかかるのかをみていきましょう
太陽光発電装置廃棄にかかる費用は?
この情報は少ないのですが、可能な限り詳細を調べてみました。
廃棄費用はいくら用意しておくべきか?
結論から言いますと、事業用の低圧(50Kw以下)案件の場合は、投資金額の5%程度が必要であると見込まれています。1,500万円の投資物件ですと75万円ということになります。
しかしこれはあくまでの経済産業省の試算ですので実際の必要額ではありませんし、廃棄費用は年々低下しているのが現状です。
廃棄の時期が今から10年、20年後であることを鑑みると、費用はその半分かそれ以下となる可能性も想定できます。
太陽光発電装置廃棄費用は意外と?安い。その理由は?
国立研究開発法人のNEDOでは、将来の太陽光発電装置の大量廃棄を見越して、効率的な廃棄について研究を進めています。
既に太陽光パネルのリサイクル技術ほ相当進歩しており、平成10年当時の想定以上に安くリサイクルできる様になってきています。この技術は今後ますます改良されていくことでしょう。
国内で流通しているほとんどの太陽光パネルは単結晶シリコン、多結晶シリコン、薄膜シリコンが材料として使用されています。これらは有害物質を含んでいませんので、2019年時点でもすでにリサイクル率は95%となっています。
さらに、パネルや架台の金属はその状態によっては売却可能です。つまりそれらを売って廃棄費用の一部に当てることが可能となります。
以上の観点から、50kw以下の低圧の発電所の場合では、厳しめに見積もっても十数年後には50万円もあれば廃棄費用に足りるのではと予測します。
上述しましたように、20年間の固定買取期間が終わった後も1kw7円程度での買い取りは継続されるので、その収益を積み立てれば、40〜50万円程度の費用は充分に賄えます。
以上の観点から、廃棄費用については大きな心配はいらない、と考えて良いのではないでしょうか。
しかし実際は強制徴収される?
買取保証が終わった後の廃棄費用計画としてFIT法(太陽光発電固定価格買取制度/経済産業省施策)で認識されている廃棄費用は調達資金の5%で計算されています。
つまり、太陽光発電のために1,500万円の資金が必要であった場合、75万円の廃棄費用が事業費として計上されていると説明されています。
しかし実際のところ、資源エネルギー庁の調べでは、低圧(20kw~50Kw)で83%、50kw以上で84%の発電設備が廃棄等費用を積み立てていないとことが報告されています。
このことからほとんどの事業者は廃棄費用については、現時点では計画的に積立していないことがわかります。
この調査を受けた資源エネルギー庁のワーキンググループは、将来の太陽光発電装置不法投棄等に対応するための施策を検討しています。
その概要は、
この案件は、おそらく数年後には法制化される見込みです。
太陽光発電を開始して10年を経過した事業者に対して、強制的に廃棄費用を徴収するという案です。
その徴収方法や積み立た費用の引き出し方法等については調整が必要であり、その具体案を議論している状況です。
ただし、その時点で自ら太陽光発電装置の廃棄費用を積み立て、準備している事業者は、強制徴収されることはないとも書かれています。
まとめ
以上のように、太陽光発電装置の固定買取期間終了後の扱いとしては、売電を中止して廃棄処分するか、それまでよりも低い価格での売電収入を得続けるかの選択になりそうです。
例え売電を続けたとしても、いずれは装置の廃棄をせざるを得なくなる時が来るでしょう。
廃棄に必要な費用は今回の記事で解説しましたように、高額なものではありません。
ただし、災害などで故障して固定買取期間終了前に廃棄することもあり得ますし、自ら積み立てをしていないと強制徴収される可能性もでてきました。
自ら積み立てても強制徴収されても事業者としての負担は変わらないはずです。ですが、強制徴収の場合は利息はつかないでしょうから、資金運用の点からは自ら積み立てた方が良さそうです。
今回の記事を参考に、事前に廃棄費用を積み立てて確保するか、強制徴収組に組み入れられるか、そろそろ検討されることをお勧めします。