エーザイのアルツハイマー治験失敗で進退窮まる?開発戦略は?

就職・転職
johnhain / Pixabay
スポンサーリンク

エーザイが究極のアルツハイマー治療剤だと目されていたアデュカヌマブの第三相試験を中止しました。

これまでにその有用性が見込まれ権威性の高いネイチャー誌の表紙にも取り上げられた治験薬です。

しかし第三相試験の途中にもかかわらず有効性を見ることが困難であるとの理由で全ての治験が中止されてしまいました。

そしてその直後にエーザイはその代替薬とも言えるBAN2401の第三相試験入りを発表しています。

にもかかわらずエーザイの株価はストップ安。今後エーザイはどうなっていくのでしょうか?

目ぼしい新薬は米国メルク社と提携した抗がん剤のみ。次を落とせば、会社の存続を脅かす事態にもなりかねない状況です。

すでにアルツハイマー病の開発戦略は根本的に変えなければならないかもしれないと揶揄されている状況下での第2戦開始に勝算はあるのでしょうか?

スポンサーリンク

アルツハイマーの原因仮説、アミロドベータ仮説は終焉か?

geralt / Pixabay

エーザイは必ずしも研究開発力が強いわけではありません。
ですが世界初のアルツハイマー治療薬アリセプトを開発することに成功した企業です。

その意味では賞賛に値すると言えるでしょう。

そこからエーザイはアルツハイマー病に対する研究を強化継続してきました。

しかしその領域に巨万の資金を投じているのはエーザイだけではないのです。
世界の名だたるメガファーマがしのぎを削って研究をしてきました。

イーライリリー社は25年以上にわたってアルツハイマーの根本治療薬の研究を進めています。
これまでにその投資に費やした金額は3300億円以上です。イーライリリーも中枢神経系の研究に強みを持つ製薬会社です。

研究のメルクと言われる米国メルク社もアルツハイマー病の克服のためにそのリソースを費やしてきました。

しかしそれらメガファーマの研究力を持ってしても、画期的新規機序の薬剤開発に成功した例はありません。

あまねく、第3相試験で結果を示すことができず、治験を中止しています。

近頃は開発競争が激しく、無理をして第三相試験に入ることも多くなっています。もはや第2相の試験結果はあてになりません。

特にアルツハイマーの治験は効果判定が難しく、結果として大規模にならざるを得ないため、第三相試験で失敗することは、企業としては相当大きなダメージを受けるはずです。

同じ仮説で多くの薬剤が第三相試験まで行けば、上市にこぎつける物質が出てきても全く不思議はありません。

各社そのダメージを覚悟の上での参戦でしょう。

にも関わらずアルツハイマー病で承認を得た薬剤はエーザイのアリセプトと類似の薬剤と貼付剤の計4剤だけ。そしてそれらでは充分な治療は出来ていません。

人類はアルツハイマー病の根本的治療剤を求めています。

アルツハイマー病は人類の高齢化に伴い、爆発的に増えています。一種の老化とも言われる疾患です。

薬剤開発に成功すれば巨万の富を得ることができます。

人類の幸福のためそして自社の利益のために多くの企業がアルツハイマー病の研究開発を進めています。

研究の拠り所は、2000年に提唱されたアミロイドベータ仮説。つまりアルツハイマー病の原因と考えられるアミロイドベータという物質、これを制御すればアルツハイマー病を寛解できるのではないかという仮説です。

これまでその仮説をもとに多くの物質が生み出され臨床試験を繰り返されてきました。

2000年にこの仮説が提唱されたので、すでに20年近く経っています。

しかし未だに一つとして承認された薬剤はありません。つまり臨床試験で効果を示せなかったのです。

そして今は、この仮説は間違いだったのではないかと言われているのです。

エーザイの判断は?

これまで多くのアミロイドベータをマネージする薬剤が開発されて行きました。

その研究結果から、アミロイドベータが脳内に蓄積して、その後にそれを除去や阻害するのでは手遅れではないか?
脳はもっと複雑でありアミロイドベータが蓄積して症状を呈する、そのずっと前から障害が起きて蓄積している。したがって症状があるか無いかのごく初期段階から薬剤を投与しなければ意味がない。

そのようなことが提唱されていました。

そしてエーザイは今回のアデュカヌマブの第三相試験において、アルツハイマー病のごく早期の患者さんをも治験に組み入れることでその有効性を示そうとしたのです。

これまでよりもより多くの費用をかけ確実性を求めて臨んだ第三相臨床試験でした。

 

しかしながら、期待の新薬は実際に効果を示すことはありませんでした。

 

つまりこの時点である意味仮説が崩れているのです。

にもかかわらずエーザイは第二の矢であるBAN2401の第三相試験入りを発表しました。同様の機序です。

本当に勝算はあるのでしょうか?

第二相試験まででそれなりの結果を示した薬剤は五万とあります。

仮説が崩れているのに、なぜさらにアクセルを踏むのでしょうか?

BAN2401の暗雲

geralt / Pixabay

エーザイはBAN2401の第三相試験入りとその効果を強調しています。

ですがこの薬剤がそれほど有力ならば、なぜアデュカヌマブの開発を優先してオプションを行使して投資を加速したのでしょうか?

アデュカヌマブは、元々は米国バイオジェン社の開発物質です。

一方のBAN2401は、エーザイの自社開発物質です。

エーザイは元々BAN2401の開発状況を見ながら、アデュカヌマブへの追加投資をするかどうかを決めるオプションを持っていたのです。

追加投資をすれば、成功した際により多くの利益を得られます。
そしてエーザイは万全の体制でそのオプションを行使したのです。

しかしながら、その判断は間違い。フェーズ3は途中で中止。そして自社開発品であるBAN2401に注力せざるを得ない状況になっているのです。

しかしながら結局はBAN2401もアミロイドベータ仮説に基づいた物質です。

考えうる最善の臨床試験を行ったアデュカヌマブが失敗に終わった以上、BAN2401に大きな期待は出来ないと言わざるを得ません。

かもBAN2401の第二相試験の最終解析の報道でも主要評価項目は達成したとは読み取れません。

エーザイの発表においても重要エンドポイントを達成したと発表されているだけであり、主要評価項目の達成の有無については触れていません。

それでも、やらざるを得ないのです。

そこにはその企業の文化があり、夢があるのでしょうか?当然そこには、台所事情もあるでしょう。

世界初のアルツハイマー治療剤アリセプトも、偶然に発見された物質です。どこに何があるかがわからない。その無を有にする、できる会社になろうとしているのでしょうか。
それとも、引くに引けない状況なのでしょうか?

まとめ

エーザイに限らず多くの製薬会社は、利益のためだけに研究開発を進めているわけではないと私は信じています.

人類の健康と長寿のために、自分たちの知恵を結集させ不可能を可能にしているのが製薬会社だと思います。

これまでその努力によってどれほど多くの人たちが救われたでしょうか?
日本人は世界でも最たる長寿国民です。

その多くは素晴らしい医薬品の開発によってもたらされたと言っても決して過言ではないと思います。

多くの感染症は医薬品の開発によって撲滅されました。
いくら優秀な医師がいても、感染症を撲滅させるための医薬品が開発されていなければ歯が立たなかったでしょう。

世間からすると製薬会社は悪の商人のように思われるところもあります。

そのようなテーマで映画が作成されることも多々あります。

確かに株価を考えると、近道をせざるを得なくなることもあるでしょう。

意味のない医薬品を販売して儲けている会社もないとは言えません。(敢えて社名は出しませんが、みなさんご存知の大手メーカーですよ)

 

ですが多くの製薬会社は人類の健康と幸せのために努力をしているのです。

その努力なくして人類の健康はありません。

今後エーザイがどうなるのかは誰にも分かりません。今後さらに数百億円の投資をしていくことになるでしょう。

しかしそこに道があると信じるならば、今や抗がん剤以上に困難であると言われるアルツハイマー病や中枢神経疾患に対する研究を是非とも続けて欲しいと思います。

一方、エーザイは45歳以上社員を対象にしたリストラ策を発表しています。

懐事情は決して楽な訳ではないはずです。

製薬会社はある意味博打です。

BAN2401の賭けに成功するか、さもなくば、、、健闘を祈ります。