サンファーマのポーラ買収は何を意味するのか?製薬会社の憂鬱

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久しぶりの製薬関連記事です。

この間、武田薬品によるシャイアー買収案件が株主総会で決議されて話題を呼んでいますが、あまりに物騒なので、ちょっと記事にはし難いですね。

今回の話題は後発品産業です。

インドの後発品大手、サンファーマが後ポーラの子会社後発品会社を買収します。

世界各国で買収を重ねて後発品産業で世界第5位にのしあがったインドのサンファーマ。

精神薬、神経薬、心臓薬、糖尿病薬、胃腸薬、呼吸器系薬、形成外科薬に強みがあります。

今回の仕掛けは、日本の後発品産業の再編の始まりかもしれないとの意見も聞かれます。

万年赤字の会社を買収する意図は何なのでしょうか?

 

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サンファーマ日本法人とは

2012年3月に後発品メーカーとして日本に進出しました。
 
日本の後発品産業が政府の思惑で活況を呈する中、サンファーマのプレゼンスは低いまま現在に至っています。
 
もっとも、世界最大の後発品メーカーであるテバの日本法人や、マイラン、サンドなど、海外の名だたる後発品メーカーは日本では苦戦を強いられていますので、海外後発品メーカー共通の問題かもしれません。
 
サンファーマ日本法人は、これまでファイザーやGSKで要職を務められた松村勲氏が会社を率いてきました。
2016年11月にはノバルティスの長期収載品14品目を承継しています。
2018年12月現在の取扱品目数は42製品です。
 
それを仕掛けたのは、松村氏と元サンド株式会社の代表取締役であった中道淳一氏だったと言われています。
 
しかし、2016年の仕掛けとしては規模も小さく、先細る長期収載品の価値を考えると、サンファーマの業界でのポジションを押し上げる起爆剤にはならなかったようです。
 
その後、2017年10月に松村氏の後を継ぎ、中道氏が代表取締役社長に就任され、今回のポーラファーマの買収に至っています。
 

ポーラファルマの買収

ポーラファルマとは化粧品で有名なポーラ・オルビスホールディングスの子会社です。
 
ポーラファルマは科薬という子会社を有しています。科薬はポーラファルマの生産部門と位置付けられます。
 
ポールファルマの社員数は292人、科薬は167人です。
 
今回の買収によってほぼ全ての社員がサンファーマに移籍するとされています。
 
親会社のポーラが化粧品の会社ということで、その関連である皮膚科に強みを持つ製薬会社として活動してきました。
 
しかしながら業績は冴えず、本体の足かせになっていたと言われています。
 
もとより医薬品市場において皮膚科はニッチで市場も小さく、医薬品へのニーズも少ない領域です。
 
17年度の連結売上は約120億円。純損失が8億円という結果でした。
 
これまでの累計損失は約90億円です。
 

サンファーマによるポーラファルマの買収

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今後日本の医薬品産業はますます厳しくなると言われています。
 
薬価はますます引き下げられ、新薬が出せないメーカーが生き残る余地はありません。
 
後発品メーカーは、今は政府の施策による右肩上りの市場の恩恵を享受していますが、2020年、その後は茨の道が待ち構えています。
 
厚生労働省幹部からも今後、後発品シェアが80%を越えた後、後発品メーカーの淘汰は避けて通れない、自社の経営は自分たちで考えて欲しいと、言葉を隠しません。
 
そのような厳しい環境下におけるサンファーマの買収劇。
 
一体何を狙っているのでしょうか?
 
今回の買収は、デッドフリーキャッシュフリーベースでポーラファルマの株式を100%買い入れします。
 
購入価格は1億円。
 
赤字経営で今後立ち直る見込みがない会社なのですから、基本的に価値はありません。
 
親会社のポーラ・オルビスホールディングスは、これまでにポーラファルマに90億円を貸し付けています。
 
今回の買収の条件としてポーラ・オルビスホールディングスはその90億円を全額債権放棄します。
 
ポーラ・オルビスホールディングスとしては、お荷物であったポーラファルマを切り離せるのですからやむを得ない損切りと言えるでしょう。
 
一方のサンファーマの立場はどのようなものなのでしょうか?
 
一億円で買収できたとは言え、喜んではいられません。
 
このままでは毎年10億円程度の赤字を計上する会社です。
 
新薬を出せる研究開発力もありません。
 
リストラを断行するためには、別途財源が必要です。
 
サンファーマ自体、後発品ビジネスでは世界5位と言えど、その売り上げは5,000億円程度。
 
世界一位の製薬会社は17年12月時点でファイザー、売り上げは5兆6,000億円超、
後発品第一位はテバで、売り上げは2兆5,000億円超です。
 
日本の後発品メーカーでは日医工と沢井製薬がしのぎを削り、18年3月期の売り上げは両者ほぼ並んで、1,700億円程度。
 
サンファーマがまともに戦っていては、生き残れる保証はありません。これまでのサンファーマの伸びは、主に新興国からきており、米国や日本では苦戦を強いられています。
 
そのような環境下において、サンファーマは皮膚科を強化する戦略をとっています。
 
ニッチ市場での生き残り策でしょうか。
 
日本での後発品事業をどのように立て直すのかは不明です。
 
ポーラファルマが助けになるとは考えづらいでしょう。
 
さらなる買収を視野に入れているのか?
 
現時点では、ポーラファルマを利用して、親会社の皮膚科、あるいは開発中の眼科領域新薬を成功裏に上市させるための買収とも考えられます。
 
それにしては、リスクの高い買い物とも言えます。
 

まとめ

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日本の医薬品市場は今後大きな伸びは期待できません。
それどころか、薬価制度の見直しで、ますます弱肉強食の市場になっていくでしょう。
 
早々と日本市場から撤退したインドのザイダスと、さらに資金をつぎ込むサンファーマ。
 
新薬メーカーも、後発メーカーも2019年以降は再編を睨んだ活動にならざるを得ません。
 
日本に見切りをつけて、大きな借金を抱えて世界に打って出た武田。
 
自前主義を捨てられない日本の専業後発メーカー。
 
場合によっては縮小政策も視野に入れてきた外資メーカー。
 
もはや退路を断たれた中小メーカー。
 
リストラによって、これまでモデルの変換を迫られているのが現在の製薬産業です。
 
いずれにせよ、製薬会社は新薬が全てです。販売の巧拙よりも、やはり新薬を出せるかどうかがその会社の価値なのです。
 
ただし、後発メーカーは少し違います。新薬メーカーの特許切れがないと新製品は出せません。その新製品を基準を満たして、いかに安く安定して提供できるかが勝負です。
 
付加価値などはほとんど求められていません。全くビジネスモデルが違うのです。
 
サンファーマはインドのメーカーなのでコスト競争力があるように思えます。
 
しかし、実際はそれほど単純な世界ではないのです。
 
海外後発メーカーの日本での成功事例はファイザーに買収されたホスピーラ以外にありません。しかしそれも注射、病院市場のみ。
 
また、
 
新薬メーカーが後発ビジネスを手がけて成功した事例はほぼありません。
 
マインドセットが異なります。
 
後発メーカーが新薬メーカーになろうとして成功する例もほとんどありません。
 
似ているようで全く異なるビジネスなのです。
 
 
さて、戦上手はどの会社でしょうか?
 
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