こんにちはColoです。
以前の記事で製薬会社のMRのリストラに関して記しましたが、さらにリストラが加速してきましたね。MR、いわゆる営業職に限らず肝心要のはずの研究職もリストラの対象です。
新薬命の製薬会社で研究職がリストラってどういうことなんでしょうか?
製薬会社の研究職リストラは珍しいことではない
実はこれ、今に始まった事ではないんですよ。この業界ではごくごく当たり前のお話。
外資系ではもう10年以上も前から研究職はリストラの対象でした。
かつては薬学や、化学、農学部、などを卒業した学生の花形の職場が製薬会社の研究職だったのですが、今は様相が随分違ってきています。外資系ではすでにリストはほぼ完了して、募集すらしていません。
以前は日本に立派な研究所を持っていた企業も今は全て売却済。アジアの研究所はアジアへ移転して、インド人がその職の大半を占めています。
理由は様々です。グローバルな環境の中で意見を交換し合う際に、やはり日本人の英語力は見劣りします。研究に従事していた研究者が流暢に英語を話せるとは限りませんし、むしろ話すという観点では苦手な方でしょう。
さらに、日本人の給与はアジア人より高い、研究施設の維持費も高い!電気代も高い!その割に成果は今ひとつ!ということで、外資の研究所は閉鎖の憂き目にあい、研究者たちは体良くリストラされてしまいました。
日本では終身雇用制度により簡単にリストラできなかったのですが、労働基準法が変更になり、現在では日本でも相応な理由があればリストは可能です。なので、外資製薬会社では結構頻繁にリストラが行われているようです。
その点日本の製薬会社は流石に本拠地日本での研究所を閉鎖することはない。武田薬品などは強化のために大阪十三にあった研究所を、総工費1470億円かけ、神奈川県湘南に移転させて最新鋭の設備に投資した!と威勢がよかったのですが、、、、ついにその研究所からもリストラをせざるを得なくなったようです。
その規模全体で千人に達するとか。この遠因は、グローバル化を焦った経営方針の大改革で外部、特に外国人経営陣を招き入れたことから武田の研究力がますます弱くなったとも言われていますので、一概に「製薬会社の研究」が日本では成り立たないとは言い切れないとも思います。
事実、中堅どころの塩野義や小野薬品などは世界に伍する新薬を創出できていますので、一概に研究開発費の多寡だけではないでしょうし、その会社の文化やマネージメント手法によってはまだまだ戦える!とも言えますね。
ですが、製薬会社に根本的な変革が起ころうとしているのは事実です。
製薬会社の行き先
かつて製薬会社では土の中の微生物を見つけてきてそれを培養して新薬を創世した時代があります。薬の開発が目まぐるしい進歩を遂げた電大でも、なくてはならない抗生物質はカビから作られますね。完全な化学合成品もありますが、、、
で、その後研究が進んでレセプター、受容体の拮抗剤っていうのが花形になっていきました。それらも化学合成品ですよ。テレビでも有名なガスターていう胃酸を止める画期的な薬もその一種ですね。
このくすり、ガスターが最初ではないのですが、、、、それは置いておいて、本当に画期的な薬だったんですよ。H2受容体拮抗剤と呼ばれていますが、これによって多くの外科医が失業したとか、、、それはオーバーですが、胃潰瘍なんてこの薬で治せるようになりましたからね。
それで、世界のどの研究所でも体のあちらこちらのレセプターを探して、その拮抗剤や逆に刺激する薬剤の開発に躍起になりました。その結果、
もう調べ尽くしてこれ以上ない!というレベルに達してしまったのです。
じゃあ、もう薬は創れないの?っていえば、そんなことはりません。
その後は抗体医薬や分子生物薬にシフトしていきます。今の全盛はこれらですね。バイオ医薬品ってやつです。
話は逸れているようですが、そうではありません。専門でない方にはわからないかもしれませんが、昔と今では求められる専門知識や技能がちうということなんですね。
ですから化学合成について深い知識や技術を持っている研究者はもはやお払い箱。現在はいわゆるバイオロジスト全盛、、、今後しばらくはそれが続く。という文脈でどんどんリストラが進められているわけです。
しかも徹底した効率化と高い生産性が求められています。製薬会社の研究所に勤めて、一生かかって1品も世に出せなかった研究者なんて五万といます。いやむしろ1製品でも出せれば表彰ものですよ。
さらに、その先は再生医療につながっていきます。そうなると、製薬会社という存在自体が無くなる可能性さえあります。
すでにそれを見越した動きが始まっています。一部の見方では、再生医療は高額だし、本当の商業化までにはまだまだ時間がかかるとの意見もあります。
確かに今しばらく時間はかかると思われます。ですが、この波はかならずやってきます。その時に始めていてはもう手遅れでしょう。
かつて米国メルク社(MSD)は研究の方向性を誤り、新薬が枯渇した時代がありました。間違いなく主流になり、市場から要求されている「癌」の研究やバイオに力を入れなかったことがその原因で、慌ててシェリングプラウを買収したというのは有名なお話です。
将来の疾患構造を見据え、現在と将来に必要な技術に投資する。これは経営として当然のことなのですが、武田薬品や米国メルクといった超一流の企業でさえも舵を切り間違える領域です。
第三者の目で見れば「間違っているよなー」って思えることも中にいるとそうは見えなかったり、わかっていても表立っては言えなかったりってありますよね。
製薬会社は安定した産業です。ですが、職種によってはもはや安定などありません。MRにしても、研究者にしても、もはや自分が最初に入社した会社に定年退職するまで勤め上げるという時代ではありません。
アンテナを張り巡らし、自分の力を磨いて、外の世界に飛び出す勇気も必要な時代ではないでしょうか?