GSKとファイザーの連合再開、メガファーマの戦略から未来を占う

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世界最大規の大衆薬新会社が設立されます。予測売上高は1兆4,000億円。

果たして、この会社、そしてこの戦略は成功するのでしょうか?

現在2018年12月。
今から約9年前、2009年11月ににGSKとファイザーが連携してHIVの専門の合弁会社を設立しました。

その名は「ヴィーブヘルスケア」。

その後、シオノギが資本参加して、GSKが76.5%、ファイザーが13.5%、そしてシオノギが10%という資本構成になっています。

日本の本社はGSKの中に間借りして運営しています。

HIVの研究、製造、販売に特化している会社ですので、大変専門性が高く、HIVの分野では世界第2位につけています。

感染症に強い3社の面目躍如というところでしょうか。

そして、今回GSKとファイザーはさらに大衆薬についても合弁会社を立ち上げます。

GSKが68%、ファイザーが32%を出資して設立する合弁会社に両社の大衆薬を集約して、本体は医薬品に集中するという戦略です。

新会社の売り上げは、約1兆4000億円になるものと目され、世界最大の一般大衆薬メーカーとなります。

では最初に、GSKとファイザーの新合併会社を考察する前に、世界の市場を見てみましょう。

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世界の一般医薬品市場

 
下のグラフをご覧ください。赤いグラフがOTC、OVER THE COUNTERといわれ、一般大衆薬を指します。
 
このグラフから読めますように、世界各国の一般大衆薬市場は、医薬品市場の10%前後を占めています。
 
 
 
 
出典:Health at a Glance 2013 (Report). OECD. (2013-11-21). pp. 104-105. doi:10.1787/health_glance-2013-en. ISBN 978-92-64-205024.
 
しかし一般大衆薬市場は、価格競争が激しく、また利益性も高くありません。
 
特許が切れた医療用医薬品や、薬効や副作用が比較的マイルドな医薬品を組み合わせて商品化されることが多いです。
 
多額の研究費を必要とはしませんので、各国に中小企業がひしめいています。
 
医療用医薬品メーカーの一部門として一般大衆薬を手がけることも多いです。
 

医療用医薬品と一般大衆薬の住み分け

 
医療用医薬品メーカーが、それまで培ってきたノウハウを利用して一般大衆薬を販売することは、これまで少なくなかったのです。
 
医療用医薬品分野の新薬を開発し、発売することは、莫大な費用と時間を要し、それでも必ずしも新薬を手に入れられるとは限りません。
 
ですので、これまでは医療用医薬品メーカーにおいて、一般大衆薬領域も重要な収益源だったのです。
 
しかし医療用医薬品メーカーとしての経営と、一般大衆薬メーカーとしての経営は全く観点が異なります。
 
利益性やリスクの取り方も全く違うのです。
 
現在、医療用医薬品産業は新薬のタネが枯れ、改革を迫られています。
 
これまで以上に費用がかかり困難な新たな道を探さなければならない医療用医薬品メーカーにとって、もはや一般大衆薬分野は収益の助けにならない存在になりつつあります。
 

医療用医薬品分野と一般医薬品分野の分離

医療用医薬品分野では、これまで以上に研究開発費が必要となり、リストラが避けて通れない道となってきています。

構造改革を断行して、新たな一歩を踏み出さなければ生き残れないのです。

同時に一般医薬品分野も、新製品の開発に苦しむ状況になってきています。

医療用医薬品分野の新薬が分子標的薬やバイオ医薬品にシフトしていけば、一般医薬品分野ではこれまでの医薬品の組み合わせを変えて新薬を作るしかなくなります。

生き残るためには、経費効率を高め、価格競争に勝っていくしかありません。

それを実現するために、今後医療用医薬品メーカーの1部門であった一般医薬品部門が切り離されていくことは十分にあり得る話です。

GSKとファザーが目指すものは何か?

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今回の大衆薬事業の合弁会社設立で、両社は医療用医薬品やワクチンに経営資源を集中したいとの考え方のようです。

このことは何を意味するのでしょうか?

新会社が得るもの、失うもの

注)新会社の概要は一切発表されていません。
 

新会社が得るもの

経費の削減による経営の効率化
 
GSK とファイザーの一般大衆薬を合わせることで規模の拡大が図れます。
 
ただし、薬産業というのは特殊なので、そのことによってバイイングパワーやセリングパワーが増強されることはないでしょう。
 
もちろん親会社とともに、共同で原料などを購入するならばバイイングパワーは強くなりますが、どのようにするのかは不明です。
 
売り上げ規模を拡大することで、より大きな研究開発費を賄える、あるいは宣伝により多くの費用をかけられると考えるかもしれませんが、それは多分間違っています。
 
新たに販売できる製品が増えるわけでもないので、売り上げは単に1+1=2の世界にしかなりません。重複する薬効分野の製品があれば売り上げが減少することも考えられます。
 
つまりこれまでの M & A と同じことです。
 
二者を足すことで、余分な経費を削減して、収益力を向上させることが一番期待される効果になるでしょう。
 
 
大衆薬に特化した経営戦略
 
医療用医薬品には医療用医薬品の、そして一般大衆薬品には一般大衆薬品の経営の方法があります。
 
研究開発にかかる費用の額や期間も全く異なります。
 
販売チャネルや販売方法も全く異なります。
 
価格体系や利益率も異なるのです。
 
大衆薬に特化した経営戦略を取れることから、効率的かつ効果的な経営成果が期待できます。
 
 
 
 

新会社が失うもの

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製品、人のリストラ
新会社は、今後の成長のために、まずはリストラを断行せざるを得ません。

既に述べましたように、合弁会社は売り上げがすぐに増えるわけではありません。
 
場合によっては売上は減少します。
 
したがってリストラは避けて通れない道です。
慣れ親しんだ製品であっても、利益性の低い製品は、販売中止されることになります。
 
また、優秀な社員であっても、重複している部署では解雇せざるを得なくなります。
 
知名度
 
一般大衆薬非常において、 GSK やファイザーという会社名がどれほど浸透しているのかはわかりません。
 
ですが、合弁会社は新規に立ち上げる会社です。
 
全くの無名から始めなければなりません。その意味ではブランド力は失うものと言えるでしょう。
 
 

 

GSK・ファイザー本社と大衆薬新会社どっちが生き残る?

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GSK/ファイザーの大衆薬の新会社は、現時点では上場するという発表はありません。
 
当面、 GSK やファイザーの子会社という位置づけになるでしょう。
 
しかし将来を考えた場合に、完全にスピンオフされる可能性も否定できません。
 
本体が医療用医薬品への集中特化を可能にするために設立される合弁会社なのですから、その会社をいつまでも子会社にしておく意味はない、と考えることは不思議ではありません。
 
では医療用医薬品に特化していく GSK やファイザーと、一般大衆薬に特化していく新会社、どちらに将来性があるのでしょうか?
 
これは現時点ではなかなか難しい推察になると思います。
 
集中特化というのは、現在の経営の主流です。
 
しかし同時に、専門集中化するということは退路を断つのと同じことです。
 
GSK やファイザーが集中戦略をとって、必要とされる新薬を出し続けることができるのかどうか?
 
全てはそこにかかっているでしょう。
 
ここで、世界トップ10の医薬品メーカーの売上と開発費を見てみましょう。
 
 
ファイザーは、売上は世界1位ですが、研究開発費は5位です。
 
GSKは売上が世界7位で、研究開発費は8位です。
 
そして、これらの売上や研究開発費には一般大衆薬の分が入っています。
 
利益率の低い一般大衆薬をスピンオフすることで、経費効率は高まります。
 
しかしそのことは、使える経費の額が増えるということではありません。
 
得られるメリットは、経営陣が医薬品事業に集中特化して経営を実行できるということです。
 
今後この2社が単独で厳しい研究開発の世界を生き抜いていけるのか、はたまだ本体同士の合併があり得るのか、注目したいところです。
 
 
 

まとめ

医薬品の開発には莫大な費用がかかります。
 
年々その費用は増加しています。
 
それを賄うためには。一定以上の売上、一定以上の経費が使える規模が必要である。
 
このような考えがこれまでの主流でした。
 
しかし規模が大きくなったからと言って、新薬が手に入るとは限りません。
 
ファイザーはこれまでに数多くの買収を成功させましたが、企業価値は買収後に低下しています。
 
そして、ファイザー社自体が自ら研究開発した新薬が増えているわけではないのです。
 
医薬品産業はこれから大きく変革を迫られていくと言われています。
 
各社生き残りのために様々な策を講じていくことになるでしょう。
 
いずれにしても、新薬メーカーの使命は、より良い新薬を発見し、開発し、患者さんの元に届けることです。
 
人類の健康のための産業である医薬品産業。
 
 
 
 M & A でマネーゲームの対象にならないことを願うばかりです。
 
 
 
 
 
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