製薬会社リストラの猛威、早期退職制度の手法と対応策、今後の動向は?

2018年に入って製薬会社でのリストラが加速しています。

独自路線で頑張っていたシオノギや労働組合が強いことで安泰であった日本ベーリンガーインゲルハイムまでもついにリストラを断行です。

次期193月期の予測がマイナス14.3%と厳しいものになった塩野義製薬手代木社長。

決算発表会で国内営業はそうとう大きな見直しが必要、MRの数はすさまじく減らないといけない」となんとも刺激的なリストラの方向性を述べています。

他社のMR一人あたりの生産性が1.5-2億円程度であるのに対し、塩野義は1億円を切るとの予測ですので、これ以上耐えられないといったところでしょうか。

かつて業界で最も強い営業力と言われた塩野義が完全に戦略を変えることになります。

まさしく製薬会社社員受難時代となりました。

今回は早期退職の手法と対処方法について詳しく解説していきます。

早期退職制度の概要

3dman_eu / Pixabay

日本では長らく終身雇用制により雇用が保証されていました。

強い労働組合があればなおのことですが、それがない会社であっても労働基準法により簡単には社員を解雇できなかったのです。

しかし、長らく続く日本の構造不況で国際競争力が低下し、「自由化」の名のもとに様々な規制が外され、労働基準法も改正されました。

これにより、企業は合法的に社員を解雇できることになり、それを得意とする人事責任者や担当者を新たに雇用する企業も増えています。

リストラに慣れていない企業が見よう見まねで早期退職制を実行すると大きな労使紛争になる恐れがあるからです。

最近では、部署や人数を定めず早期退職を実施する会社も出て来ていますが、その様な会社の場合は、リストラ後の経営を危うくする可能性が極めて高くなります。

早期退職制度の「種類」

早期退職制度とは、正確には早期優遇退職と言います。

これには二種あり、一つは恒常的に実施されている制度です。

ある年齢に達した場合にこの制度の対象となる条件を満たす社員であればだれでも応募することができ、優遇的条件を得て早期に退職するというものです。

もう一つは、企業の業績悪化などにより企業側が臨時で早期退職を募集するものです。

昨今話題となっているのはこの臨時的早期退職のことを指しています。希望退職とも言います。

今回は希望退職について詳しく解説していきます。

希望退職の処遇

希望退職は会社が対象となる部署と人数を決めて公募するものです。


その際応募した社員には優遇措置が与えられます。


一般的に下記のような優遇措置を提示する企業が多いようです。

会社が提示する優遇策

割増退職金

就職斡旋業者の無料利用

再就職活動の為の特別休暇

有給休暇の特別買い取り

企業年金の留保

など、

希望退職によるその他のメリット(社員にとって)

会社都合扱いでの退職となり、失業給付がすぐに受けられる

自ら希望した場合であれば、次の就職で不利にならないことも

こう見てみますと、それなりのメリットはあります。

腕に自信があって、次の就職や起業などにめどが付けられる人には良い制度かもしれません。

このような制度は今後頻発してくるでしょう。

どことは言えませんが、ある企業では数年に一回早期退職制度が実施されるので、社員のモチベーションはがた落ちで、社員は給料の為に働いています。

会社に対するロイヤリティーが全くなくなっていると聞きます。

このような企業では、予めこれを狙っている社員も増えているのが現状です。

希望退職の実施方法

先に書きましたが希望退職は、「対象の部署について公募」する制度です。

日本では、会社が危機的状況になり給与を支払えないような場合でない限り、社員を指名で解雇することは法律で禁止されています。

多くの製薬会社のような大企業の場合、そこまで追い込まれていることはまず考えられません。

つまり、会社はあなたを指名して解雇することはできません。

それをすれば法律違反なので、あなたは労働基準監督署や弁護士を使い無効化を主張できます。

会社側としては、有能な社員や退社されると困る役職の社員に応募されたくないのですが、公募する以上それを合法的に避ける方法はありません。

優秀な社員の場合、応募しても引き止められることがありますが、これは違法です。

さて、それでは実際どのような運用がなされているのでしょうか?

希望対処の実際の運用

早期退職制度になれている企業とそうでない企業があります。


又その企業の風土や置かれている環境が違いますので一概には言えません。

下記はある企業で実際に行われている運用方法です。

指名解雇はあり得るのか

表向き指名解雇はありません。ですが実質上の指名解雇はあります。

先ず、企業としては退職してほしい社員と退職してほしくない社員のリストを作ります。

それを持って直属の上長がまずは最初の面接を実施します。

内容は、あなたの成績や将来性について会社としての見解が述べられ

「ここまでの成績が芳しくないこと、このままこの部署にいても将来がない事、
場合によって閑職にしか仕事がなく、転勤の可能性があること」など辛い状況になることを諭されます。

 

一方で、希望退職に応じれば、「応募すればではなく、応じれば」というニュアンスで、

「魅力的な条件を得ることができる。今回応じなければ次回このような状況が提示される保証はない、場合によって自己都合退職になり、何ら優遇策がなくなる可能性がある」
と言うような面談が実施されます。

 

これは、1回ではなく、2回、3回と繰り返され、場合によっては直属上長の上席や、人事担当が同席することもあります。

このようにして、強制ではなく、辞めざるを得ない状況を作り出されます。

ここであなたが考えることは一つだけです。

「自分は転職できる可能性があるのか?」

希望退職に応じてから転職先を探しても、業界あげてのリストラ時代ですから簡単には職は探せません。

事前にリクルートエージェントに登録してあって、すぐに動ける体制を作っていなければ、無職の憂き目にあう可能性が高まります。

特に40歳を超えている場合には慎重に判断することをお勧めします。

これまでのキャリアで特殊な技能や業務についていた人でない限りは、転職は容易ではありません。

会社に強制力はないのですから、何としてもしがみつくというのも手です。

優秀な社員は引き止められる

優秀な社員は高い確率で引き止められます。

会社としては割増の退職金を支払って優秀な社員に辞められては、業務が成り立ちません。

どうしても辞めるというのなら、「自己都合になる」と脅される可能性もあります。

また、実例ですが、

希望退職の場合には人数と期限を決めます。
ですので、応募しても「人数に達したのであなたは枠に入れませんでした」
という理由で退職できないようにされたという人もいます。

なので、どうしても退職したい場合には強硬策ではなく、十分に話し合い、上長の納得を得ることをお勧めします。

国内企業の場合、早期退職制度に慣れていないことが多いので、無防備でこの制度を実施することもあります。

人数制限なし、部署制限なし、このような公募の場合には優秀な社員であっても引き止める策がないので大丈夫でしょう。

今後間違いなく早期退職制を活用したリストラは増えてきます。


そうなった時にあわてて対応するのでは、満足のいく職に就ける確率は低くなります。事前準備は必要です。

製薬企業のリストラは不可避で永続的

Genty / Pixabay

既に終身雇用制度は過去のものです。特に製薬産業では大変革が予測されています。
企業の構造自体を再構築=リストラしなければ生き残れないのです。

既に終身雇用制度は過去のものです。特に製薬産業では大変革が予測されています。
企業の構造自体を再構築=リストラしなければ生き残れないのです。

業態変更のために製薬会社で今後リストラの対象となると考えらえれる部署を次に記します。

管理部門

経理部(財務ではない)外注化で対応

人事部一部機能を残して後は外注化

総務・庶務すべて外注

購買発注縮小と外注とIT

IT→一部外注

戦略部維持、増強

研究開発部門

基礎研究整理

創薬領域の整理

臨床開発縮小・外注化

統計外注化

PV→維持、ただし外資の場合は大幅縮小(本国管理となる)

学術部基本、維持あるいは強化

MSL→強化増員

事業開発・ライセンシング部門維持・増強

製造部門

全部署縮小・外注化

ただし、抗体薬や再生医療に関するものは別。

営業・マーケティング部門

マーケティング部>維持

営業全般的に大幅縮小

プライマリーケア大幅縮小

癌・免疫疾患維持、増強

オーファン維持

特殊疾患→維持、増強

最終的な製薬会社の組織図大胆予測

harishs / Pixabay

製薬会社はもはや製薬とは言えない状況ですし、今後ますますその傾向は強くなっていきます。

優れた科学者と経営者【レベルの社員】からなる戦略チームが方向性を決め、社外から開発候補品をライセンスするか、製品或いは企業そのものを買収する。

開発は一部のディレクターとそのサポーターにより外注化される。モニター職は最小の数を保持。

開発された製品は国内外の委託工場で生産。

製品のマーケティングは社内で行う。

しかし、規制の強化でできることが限られてくるので、営業部門は大幅に縮小。

売り込みよりも副作用に焦点を当てた活動となり、医師あるいは薬剤師の資格が必須となるMSLが主力となる。

ほとんどの活動はITにとってかわられれ、1のMRは600-800名程度に収斂。

つまり、製薬会社はITを駆使した商社のような存在となり、規制当局への対応に必要な部署以外は殆どが外注化されると予測されます。

抗体医薬や再生医療が中心になるこの世界で、旧態依然とした組織が必要なくなるのは必然です。

いつこのような状態になるのかの予測は難しいですが、数十年先というような遠い将来ではありません。

事実、多くの製薬会社のほとんどの製品は自社で発見したものではありません。

外資の多くは既に日本に工場も研究所も持っていません。

外資の場合、間接部門の外注化は本国からの至上命令です。

北欧ではすでにMRは全滅しMSLだけになった企業もあります。

今後10年以内にこのようなビジネスモデルを実現した製薬会社が増えてくることは、想像に難くないでしょう。。

そこに転換できない大企業は、むしろ窮地に立たされることが考えられます。

まとめ

製薬産業のリストラとは社員の解雇のみを指してるのではありません。

新薬が枯渇して従来の手法では新製品を出せなくなっている構造。

大きくなりすぎて新薬を出しても特許切れの旧来品の穴を埋められない状況。

新技術による新しい疾患治療への期待。

これを考え合わせると、これまでの製薬企業の組織構造では対応不可能です。

同時に、より専門特化した集団として人類に貢献できる企業が台頭してきます。

諸行無常、移り変わるのが世の中です。移り変わりには痛みが伴います。

この記事を信じるかどうかはあなた次第です。将来を予測しつつ、事前に自分ができることを実施してください。

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