長期収載品ビジネスは成り立つのか?LTLファーマの事例で考察

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製薬業界でも異端の会社LTLファーマの将来が気になりだしました。

長期収載品のみを扱う企業として、LTLファーマなるものが設立されたのは、2016年8月。まだできたののホヤホヤです。

この会社は、ユニゾン・キャピタルというプライベート・エクイティーファンド運営会社の傘下企業である日本長期収載品機構とよばれる会社の子会社です。

ファンド運営会社が投資を決めたのですから、ある程度「儲かる」と見ているのでしょう。

このファンドの思惑はなんなのでしょうか?

ファンド運営会社がずっと実体企業を運営するとは思えません。どこがイグジットなのか?

奇しくも、長期収載品ビジネスを業界の先頭を切って始めたファイザーが、「撤退」を決めたこの時期に、LTLファーマの将来を論じるのも一興です。

製薬産業にご興味のある方、是非ご一読を。

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長期収載品ビジネスとは?

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まず最初に、長期収載品とは何なのか?をおさらいしておきましょう。

長期収載品とは、特許が切れ、国の定める再審査期間を満了した薬剤のことです。

通常先発医薬品の特許が切れると後発品と呼ばれる、「成分が同じで安い価格の製品」が販売されます。

安い価格の製品に市場を奪われるので、一般的には先発メーカーはその製品の販売をやめます。海外ではそれが普通です。

ですが日本では事情が違っていました。これまでは。

世界の事情と異なる日本の製薬業界

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日本は国民皆保険制度を敷いています。その制度下、医薬品として製品を販売するためには国の承認が必要です。

さらにその製品の公定薬価を取得して保険適応になるようにして販売するのが一般的な医療用医薬品ビジネスということになります。

医療機関が使う薬剤で薬価収載されていないものは、まず売れません。

しかしその一方で、一度製造販売が承認され、薬価収載されて先発品として販売を始めると、安定供給と情報の収集伝達の義務が課せられます。

最も過酷な義務は、不採算だからと言って、企業の都合で勝手に販売中止にできないという事。

国がその製品の代わりになるものがある、あるいは後発品で需要が賄える(最近できたG1にカテゴライズされた製品)と認めなければ、企業は販売をやめられないのです。

そうは言ってもこれまでは、長期収載品は後発品に比較して高薬価を維持できていました。

国民皆保険制度の庇護のもと、特許が切れた製品が簡単には後発品に取って代わられなかったのですね。

それは保険でカバーされて患者さんの自己負担が小さかったので、後発品もらっても費用負担は大して変わらい事が大きな要因でした。

わざわざ聞いたことのない後発品メーカーの製品をもらうメリットがなかったからなのです。

結果として、企業にとって長期収載品は大した労力をかけなくても利益を生んでくれる、キャッシュカウとも言えるお宝となっていました。

ところが、国家財政が厳しくなった日本政府は度重なる薬価削減策の一つとして、長期収載品の薬価を強制的に減額する施策を打つ様になりました。

もう、長期収載品に頼って生きている企業を助ける余裕は、この国にはなくなったのです。

問題は、情報の管理です。

医薬品は情報と共存在することで価値を提供できるとも言われています。

それは、その薬剤でどのような効果が期待できるのか、どのような副作用がどのような人に、どのような時に発現するのかを理解してこそ安全に使用できるのが医薬品だからです。

そして、それらのデータは先発メーカーが管理しています。

ここで問題になるのは、もし先発メーカーが長期収載品の販売をやめるのなら、10年20年にわたって蓄積された副作用を中心にした情報を誰が管理していくのかという事。

長期収載品を維持するにはそれなりの費用がかかるのです。

儲かるから維持してきた、だけど儲からないなら維持はできない。私企業としては当然の発想です。

もっとも、後発品メーカーと同レベルの人件費に給与を削減して、製造も販売も外部に委託すれば、長期収載品でも利益を出せなくも無いでしょう。

ですが、その様な製品は後発品と何が違うのかという疑問は湧いてきます。

みんなが逃げ出す長期収載品

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維持費がかかるけれど、それなりに利益も生み出した長期収載品。

だからこそ中小製薬会社はそれを死守してきたのです。

一方ファイザーの除く大手外資の多くは、もう20年も前から利益性の悪い長期収載品は後発品メーカーなどへ粛々と承継していました。

それに関わっている時間やリソースがあるのなら、研究開発に資金や労力を回してより良い新薬を提供するという考えです。

新薬を出せずに、長期収載品の利益で生き延びるしかなかった中小製薬企業経営者も、ようやく腹をくくってそれらからの脱却を図りつつあります。

そうです、新薬系医薬品会社なら、新薬を提供できないのなら存在価値はないのです。

もはや長期収載品ビジネスとはババ抜きのジョーカーの様なもの。最後に掴んだものが割りを食うものになってしまったのです。

ようやくそれ見切ったファイザーはエスタブリッシュ医薬品事業、つまり 長期収載品事業をさっさとスピンオフして大金を得て、新薬ビジネスに特化することを宣言しました。

長期収載品ビジネスの将来は明るく無い

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本質的に、長期収載品特化ビジネスは成り立ちません。

国は、そして国民は、必要な医薬品が安定して供給されればそれでいいのです。

長期収載品であってもその後発品であっても、国が品質に差がないと保証するのならば、どちらでも良いはずです。

ましてや、製造や販売を外部に委託して販売を維持する長期収載品であればなおさらです。

いやむしろ、割高な価格を国や国民が負担する根拠はありません。

しかも、どこかの先発メーカーから多額の費用を払って製品を譲り受けない限り、既存の製品は尻すぼみの売り上げ傾向なのですから、成長企業と称するには無理があります。

その譲り受ける費用はどこから出るのでしょう

しかし後発品には十分な情報がないから心配だ?

たしかに、情報は先発品企業に集約され、後発品企業はそれを共有できません。

しかし、一昔前ならいざ知らず、これだけITが発達している現代です。

情報のデータベース化など、それほど大きな労力では無いでしょうし、すでにネット上にあらゆる情報があふれています。

しかも、発売から数十年も経った長期収載品について、一体どれほどの情報が必要なのでしょう?

これは国の取り決め次第でなんとでもなると考えられないでしょうか?

結論として、代替品や同じ成分の後発品が存在するのならば、長期収載品の存在意義はほぼほぼゼロと言えるのでは無いでしょうか?

後発品には安定供給に問題がある?

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大きな市場シェア有した日医工のセファゾリンといわれる第一世代セファロスポリン系抗生物質の後発品が欠品を起こしました。

これは原薬の入荷がおぼつかなくなり、さらに製造などの問題も生じた結果、供給できなくなったとしたものです。

その結果、各社への注文が増え、セファメジンの長期収載品を扱っているLTLファーマにも注文が殺到することになりました。

LTLファーマは注文に応じることができず、出荷制限をかけざるを得なくなりました。

LTLファーマはセファメジンを開発会社であるアステラスから承継して販売しています。

2018年8月、ようやく製造量を増やして対応が可能になったLTLファーマ社長の水川氏は、次の様に述べています。

「大きなシェアの会社が供給不安定なったら、どこが肩代わりするのか?自社はシェアが低いので不可能」

「国には、ジェネリックの中でのシェアを必ずモニターしてもらいたい」

「原料調達はどのメーカーも抱える問題。後発メーカーとも協調していきたい」

「原料ビジネスが儲からないので、日本では調達できなくなった。原薬をつくれる会社を日本国内に確保することは必要」

と述べています。

つまり、ジェネリック(後発品)だから安定供給に不安があるわけではないということを述べられているわけです。

 

これはビジネスの基本です。儲からなければ私企業は撤退する。儲をだすために海外の安い原薬メーカーから仕入れる。

長期収載品を扱っている会社として狼煙を上げても、後発品メーカーと強調して安い原薬の調達をせざるを得ない。

日本に原薬メーカーを確保すべきとは、意味不明です。日本原薬メーカーがあったからといって、採算がとれる価格での供給がなされるはずもなく、価格を取るのか安定供給を第一優先にするにするのかは企業経営戦略そのものでしょう。

もちろん、日本にも原薬を作る会社はありますよ。

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しかし、そこから購入しないで、海外の安い原薬供給会社から調達しているのは、国の指示ではないはずですが、、、

国に助けてもらおうという考え方を持てば企業はとても生き残ることはできません。

少なくとも、後発品だから安定供給に不安があるとは言えないのではないでしょうか?

まとめ

現代社会は自由競争です。

ただし日本はその中でも、社会主義的な政策が多く見られます。

それに慣れると、国に依存することになります。

製薬産業自体が公益に資する部分が多分にありますので、利益重視とはいきません。

一方で、国に要請されて設立した会社でもない限り、国にあれこれと要望するのもいかがなものでしょう。

医薬品は人々の健康のためにある。これは紛れも無い事実です。

日本の政策は後出しジャンケン的な理不尽さがありますが、それはどの国の政策も同じかもしれません。無い袖は振れないのです。

しかしそれでも自由主義の世界でビジネスを展開するのであれば、自己の経営能力で選ばれる製品を届けるのが成功の原則です。

長期収載品は激変緩和の規制に中で生きている製品群です。

引き受け手がいなければやめられない長期収載品ですから、規制を変えない限り、ある一定レベルの市場シェアを維持することになるでしょう。

ただしそれがビジネスとして成り立つのかどうかは別の問題です。

価値あるものとして、国や国民の納得を得て供給し続けるのか?

あまねく後発品に置き換わるのか?

今後ますます大きく変貌していくであろう医薬品産業。

人々の健康のためにはなくてはならない産業だからこそ、産官の協調が欠かせない。

崇高なだけでは生き残れない。

利益追求だけでは存在意義がない。

とても舵取りが難しい産業です。

利益を追求するエクイティファンドが設立したLTLファーマが本当に目指しているものは何なのか?

単に国民ため、日本製薬産業のためということだけはなさそうだと思うのは私だけでしょうか?

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