医薬情報担当者(MR)|リストラに怯えるよりも今やることがある

医薬品業界には製薬協と呼ばれる業界団体があります。

その団体では各企業の行動について倫理的な観点から様々な規制を行っています。

ある意味やりすぎと思えるような規制もありますが、そこは人の命に関わる商品である医薬品を扱っているのですから仕方がない部分もあります。

仕方がないという意味は、それほど規制をしてもやはり問題のある行動が後を絶たないからです。

そのような事態を受け、厚生労働省は「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」(案) を策定しました。

国民の健康を守る官庁としては当然のことです。

厚生労働省はこのガイドラインに対してパブリックコメントを8月13日まで受け付け、 医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団や各団体がそれに対して意見をまとめ、提出したとのことです。

この厚生労働省の医療用医薬品の販売情報提供活動に対するガイドラインは、大変厳しいものになっています。

それにより、MRはさらに厳しい立場に追いやられる可能性が出てきました。

今回は、現役企業幹部、MR、薬剤師から得た情報に基づき、その状況と、MRが取るべき行動について書いていきます。

ガイドラインをうけた各企業は今後どのような対応をとるのか

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これは各企業によって大きな違いが出ることになるでしょう。

現役製薬会社社員によると、米国を中心とする外資大手の場合は、本社の倫理規定が厳しく既に製薬協のプロモーションコード以上に社内ルールで厳しく行動が制限されているとのこと。

ガイドラインで示された「販売情報提供活動監督部門」の設置など本社機能の対応は必要でしょうが、現場に大きな変化が起こるわけではないと考えられます。

一方、国内メーカーの一部や、社内体制が十分とは言えない後発品メーカーの場合は、相当大きな変革を起こさざるを得ない状況でしょう。

他の情報筋によると、いまだに売上至上主義の営業スタイルをとっているメーカーや、 MR のコール数、訪問件数、売上などを厳しくチェックしているメーカーが存在するとのこと。

これらの企業は、やり方を根本的に変える必要が出てくるはずです。

これまでにノウハウを蓄えていないのですから、 これから試行錯誤して社内体制を整える必要があります。

MR 活動の現況

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プロモーションコードを未だに遵守できていないメーカーも散見されるようですが、先の社員によると某企業では下記のような規制が敷かれているとのことです。

  • MRの自作の宣伝印刷物の使用禁止
  • 説明会用の資料等の編集修正禁止
  • 接待禁止
  • 冠婚葬祭を含めた贈り物の禁止
  • 医療従事者から求められない文献提供の禁止
  • 印刷物となっていない学会情報提供禁止
  • 承認されていない適応症や使用方法の情報提供禁止
  • 競合他社の誹謗中傷禁止

これらを見ると、今回のガイドラインに規定されている内容はほぼ全て既に実施済みということになります。

にもかかわらず今回ガイドラインが発出されるのです。

それはとりもなおさず、 黒に近いグレーの活動を実施しているメーカが散見されることが報告されているからです。

これは広く知れ渡っていることではありませんが、病院や医院にはモニターという役割を担っている 医師や薬剤師がいるのです。

彼らは訪問してきた MR がどのようなことを話し、どのような行動したかをモニターし報告しているのです。

当面は終わらない MR 受難の時代

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今回のガイドラインでは、未承認薬・適応外薬について、医療従事者や患者などの「求めに応じて」情報を提供して良いと明記されています。

もちろん厳しい条件はついていますが、厚生労働省お墨付きで未承認薬や適応外薬についての情報の提供が許されるのです。

ところがこれに噛みついている団体もあります。

「 プロモーション」に関わる MR のような人々が未承認薬・適応外薬について情報提供するのはけしからんとの意見です。

この団体によると、このような情報の提供は MSL が全て担うべきだとの意見です。

医薬品の情報提供にあたっては、科学雑誌に論文を発表しているような有資格者でなければならないとも言及しています。

この論調をそのまま受け入れるのであれば、一体 MR はどのような活動をすればいいのでしょうか?

添付文書に書かれている以上の情報の提供が禁止され、 最新の学会情報を入手してもパブリッシュされなければ医師や薬剤師に伝達することもできず、本社から与えられた情報のみを伝達する。

使用方法が難しいバイオ医薬品や抗がん剤ならいざ知らず、発売して数年経ってしまった医薬品の情報を欲している医師や薬剤師はほとんどいません。

 

製薬企業営業部門の窮地

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おりしも、厚生労働省は2019年にも薬機法を改正し、虚偽誇大広告を行った企業への課徴金及び役員の解任命令を視野に入れていると報道されています。

一部の製薬企業が蒔いた種とはいえ、業界団体として事前に襟を正すことができず、監督官庁によるガイドラインの発出を受けることになってしまいました。

独自に入手した情報によると、すでに一部メーカーはさらに MR の数を減らすべく、その対象と時期の検討に入ったとのことです。

日本全国の医療機関を自社 MRでカバーするには、 MR の数は700人程度必要だと言われています。

しかし大手メーカーの MR 数は、1500〜2000名となっています。

現時点で MR を大幅に減少させることは、売上の減少につながるかもしれないという恐怖感から大規模リストラは敢行されていません。

しかし、今後代替品の市場参入や特許切れを機に、 MR 数を大幅に減少させざるを得ない事態が生じてくると予測されます。

MR が医療従事者の役に立ち、患者さんの役に立ち、そして企業の売上にも貢献する、 そのような役割を確立することが現時点の製薬企業営業部門の急務だと言えるでしょう。

MR が自らなし得ること

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本社や営業部門幹部の施策を待っていては手遅れです。
むしろ本社は、大変保守的な対応を取らざるを得ない状況になっています。

つまりあれもダメこれもダメという施策になるはずです。

このような時にMR としてどのような行動をとれば良いのでしょうか?

是非今回、厚生労働省のガイドラインをダウンロードして読んでみてください。

事細かに色々なことが書かれています。

ですが骨子は非常にシンプルです。

承認外の効能・効果、用法・用量等の情報を提供せず、科学的・客観的な根拠に基づいて正確な内容を伝達すること。

医師の誤解を招いて、誤った使い方がされないようにすること、それだけなのです。

さらに、他社製品を誹謗・中傷等することにより、自社製品を優れたものと訴えることは禁止されています。

当然のことです。

このガイドラインは、自社品と他社品を比較して言及してはいけないとは言っていないのです。

正しい情報を構成に伝達することは許されているのです。

しかし一部企業では、既に他社品について言及することすら許されない状況になっていると聞いています。

このような場合ガイドラインに書いてなくとも社内のルールに従うしかないでしょう。

つまりガイドラインをよく読み理解し会社で決められたルールを守って活動するしかありません。

そしてそれでも生き残る、生き残れる MR になるには、 担当医師や薬剤師から信頼を得るしかありません。

自社品の使用方法や使用例、 医薬品に限らず現在医療現場で起こっていること、などなどの情報を引き出し、それに可能な範囲で答えていく。

決められたルールの中で、医療従事者の役に立つ情報を伝達していくこと。

「接待や贈り物によって医薬品をより多く使おうと思うことはない」そのように述べる医師が大半です。

一方、信頼できる MR がすすめる医薬品は使用してみたいと思う、 という医師も多いのです。

最後は人間対人間としての信頼感が物を言うのでしょう。

つまり人間力を磨くこと、が今後生き残るMRとしてなすべきこととなるのではないでしょうか?

 

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