スルガ銀不適切な融資1兆円倒産の噂|その処理と債務者が取る行動

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スルガ銀行の不適切融資が1兆円にのぼるとの、第三者委員会による調査結果が明らかにされました。

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これまでカボチャの馬車というシェアハウスの運営会社スマートデイズ(破産申請中)や賃貸アパートを建設販売するガヤルドなどに加え、一棟ものマンション融資についての不適切融資総額が2000億円程度あると報道されていましたが、1兆円の不適切な融資とは、驚愕です。

スルガ銀行による不適切な融資は、この金額から、相当期間にわたって実行されていたのであろうと推察されます。

さて、この報道がなされてからスルガ銀行の株価は更に下げ幅を広げ、8月22日、ストップ安を付けています。

今後スルガ銀行はどうなるのでしょうか?そして融資を受けている人たちはどうなるのでしょうか?

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スルガ銀行倒産説を流布する人々

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1兆円もの不適切融資が発覚したのだからスルガ銀行は倒産するに違いない、とSNSやブログで流布している人たちもいます。

根拠は1兆円の不適切融資ということ。

確かに、この金額全てを貸倒引当金に充てるのであれば、即倒産です。

スルガ銀行の財務状況を見てみると、2018年3月期の貸倒引当金繰入額が37,224百万円(6月6日修正後=42,049百万円)、経常利益が30,871百万円(6月6日修正後=10,525百万円)でしたから、赤字どころの騒ぎではないでしょう。

ですが、1兆円の不適切融資が全て貸倒引当金に計上されることはあり得ません。

融資の手続きが不適切であっても、問題なく運営されている投資案件もあるはずです。

たとえば、債務者の資産が水増しされていた場合、投資物件からの賃貸収入に問題がなければ、貸倒引当金を計上するする必要はありませんね。

スマートデイズの案件ように、詐欺まがいの事業を営んだ挙句に倒産させ、予定されていた家賃収入が全く見込めない債権であれば別ですが、今回の調査で不適切な融資であったことが判明したことと、融資先の賃貸経営がどのように営まれていくかは全く別問題です。

さらに、これらの貸し出しは有担保物件が殆どです。不良債権化しても少なくともその5割~6割は回収できるはずではないでしょうか?

2019年3月期の単年度決算において赤字決算になる可能性はありますが、それを持って倒産というのは早計すぎると言わざるを得ません。

ちなみに、スルガ銀行の2018年3月期決算短信の貸借対照表によると、現金預け金が9,000億円以上あります。

ただし、貸倒引当金の額によっては、自己資本比率の大幅な低下を余儀なくされる可能性はあります。

出典:スルガ銀行

確実に言えることは、現時点で外部の者がどれくらいの額が貸倒引当金に計上されるのかを予測することはできないということです。

従って、倒産するかどうかの議論は単なる憶測に過ぎないと言う事になります。

不適切融資1兆円の結末は

既述の如く、この不適切な融資が会計上どのように扱われるのかは、個別案件であり、一律の処理にはならないでしょう。

スルガ銀行、金融庁及び監査法人の判断により貸倒引当金の積み増しが行われることは予測されます。

単年度赤字の可能性も否定はできなくなりました。

ただし、繰り返しになりますが、現時点ではそれ以上のことは予測不可能です。

怖いのは、そのような憶測の流布による風評被害でしょう。そのような安易な情報によって取り付け騒ぎが起これば、現預金が減少しますので、危機的状況になることもあり得ます。

その観点からは、スルガ銀行としては早急に建設的かつ効果的な対応策を講じてアナウンスすべきでしょう。

不適切融資を受けた債務者の対応

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さて、融資を受けた債務者は今後どのような対応を取れるのでしょうか?

損害賠償請求

みずほ銀行に長年勤めていた天野仁弁護士へのインタビュー記事によると、債務者が本件にて損害を受けた場合には、スルガ銀行を相手取って損害賠償請求を行うことは可能だとしています。

では、損害とは何でしょうか?

予定していた賃料が入らず、返済金を賄えない場合、それを被害と言えるでしょか?

不適切な融資を実行して個人の資産を毀損しているので、銀行が予定通りの返済を求めた結果として債務不履行になれば、損害を被ったと言えるかもしれません。

この場合、融資を依頼した債務者が不適切融資にどこまで関与していたか、全く関与していないと言い切れるのか、などが判定のために考慮されるとの事で、一筋縄ではいかない様てす。

さらに、販売業者の資産水増し行為や事業計画の虚偽について、それを見抜けなかったのはオーナーの責任であり、上記スルガ銀行の損害賠償責任を減じる要素になるとも述べています。

また、当然のことですが、債務がチャラになる訳ではありません。

オーナーが損害賠償請求をかける時点で両者の関係はこじれているのでしょうから、オーナーは約定通りの返済を求められることになるでしょう。

債務無効請求

不適切融資であることを理由に、金銭消費契約は無効であることを訴求することも可能であると主張する人たちもいます。

これが実現した場合、銀行はこれまで返済を受けた元金と支払われた利息を債務者に返済することになり、債務者は債務全額を一括返済することになります。

不動産物件の売買契約は債務者とスマートデイズなどの業者との間で締結されていますので、銀行は関係ありません。

債務者は物件を業者に返却して、売買代金を取り返すのでしょうか?

代物弁済

不正な融資であったと主張して、代物弁済を求めている団体もありますが、どうなるでしょうか?

銀行が担保価値をいくらで設定しようが、代物弁済は債務不履行時の債務額と代物資産との相殺です。

債務額と担保物権の市場価値が同じということは、現実的にはあり得ません。必ず過不足が生じます。

この際、譲渡所得税の問題が生じます。

リスケジュール

スルガ銀行から投資不動産への融資を受けた複数の債務者の言によると、スルガ銀行は融資時の書類開示を実行していません。開示請求している債務者に対しても開示していません

開示しない理由は、顧問弁護士に止められているから、ということです。ですが、実情はその融資が不適切な融資であったかどうかの証拠になるからでしょう。

したがって債務者が、その融資が不適切であったことかどうかを確認することは、現時点ではできません。

しかし、スマートデイズ・かぼちゃの馬車案件や、ガヤルド案件について、不適切な融資であったという前提でリスケが進んでいるとの情報が入ってきています。

  • 一定期間の元金据置、金利のみの支払い
  • 1億円を限度としたテイルヘビー
  • 一定額返済金額設定返済
  • 金利および返済期間の変更

双方にとって現実味のあるリスケジュールについては十分交渉の余地があるでしょう。

銀行の立場

銀行としては、貸倒引当金を計上していない債務が債務不履行になると、予定外に損金が増えることになります。

従って、年度ごとに想定以上の貸倒が発生すると、別途貸倒損失を計上すことになるので、可能な限りそれを避けたいと考えます。

貸倒引当金は将来回収不可能になる可能性が高い債権について、厳密なルールのもとで会計上損金として計上しているだけです。

実際に損金が生じるかどうかは別問題となります。

不適切な融資をうけた債務者の投資物件の中には、利益を出し難い状況にある物件もあるでしょう。

このような物件について債権回収をどうするのか?

すでに回収不可能と判定して貸倒引当金を計上している物件(債務者)についは、早晩債権処理を実行するはずです。債権処理を引き延ばすメリットがありませんから。

一方銀行としては、下の表にあるIIIに分類される融資先については可能な限り債務不履行にならないように手当していくことになります。本件についてはIIIも入るのかもしれません。

引用:りそな銀行

ただし、これは銀行の経営姿勢に依るところが大きいと言われています。

債務者を救う方向なのか、貸しはがしをして自行の利益を優先するのか。

本件は、スルガ銀行が不適切な融資を実行した結果として不良債権化しているわけですから、常識的には貸しはがして自行の決算内容をよくすることは無い、と思いたいところですが、これは金融庁の指導によるところも大きいと考えられます。

銀行が想定する以上の多額の貸倒引当金の計上を余儀なくされると、経営が成り立たなくなることも有り得ます。

これは一気に銀行を倒産させることを意味しますし、そのような措置を発表すれば、取り付け騒ぎになり、市場はパニックになります。

金融庁としては、余程のことがない限り取れない措置でしょう。

そして最後に、万が一倒産したら、銀行の債権は整理回収機構の管理下に移り、債権回収が行われることになります。

まとめ

以上考察してきましたように、スルガ銀行の将来は金融庁にゆだねられていると言っても過言ではない状況になりました。

取締役と監査役の不作為は善管注意義務違反の認定の方向で検討されている、と日本経済新聞は報じています。

これにより、該当の取締役と監査役は背任行為として銀行から損害賠償請求される可能性が出てきたということになります。

しかし、現時点ではスルガ銀行自体に対する措置についての報道はありません。

金融庁としては、不適切な融資の額が大きすぎるため、預金者保護と、日本の金融市場の混乱を考え、容易な制裁策も取れず、といったところでしょうか。

第三者委員会の正式な調査報告は間もなく発表されます。

その後その報告を受けた金融庁としての指導、命令は9月に入ってからでしょう。

金融庁の判断が気になるところです。

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